その羽で、
「っ俺は、人を殴りたくないだけだ…」



口を開いたかと思えばソレで。

顔が歪んでいるのはきっと、消毒のせいだけじゃないだろう。



「人を殴りたくない?……だからって、抵抗ぐらいは出来るだろ。『やめろ』って言やあいいじゃねぇーか。なんであんたは……「言えないに決まってんだろッ!」



突然の怒鳴り声にとまる消毒の手。



「言えばどうにかなる?ああそうさ、"俺は助かるだろうな"。そしてきっと、俺をボコりにきた奴が傷つく」


「は……?」


「言葉だけでも、俺は相手を傷つけることが出来るッ。それが嫌なんだよ!

もう、俺はっ、誰も傷つけたくなんかねぇーんだよッ!!」



言いたいことを言って肩で息をする羽須美。

目の前の少年はしばし驚いたようで目をパチパチしていたが、すぐにまた気ダルそうな表情に戻った。

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