...Melting Love...―愛檻―
「二楷堂が私とばっかりいるから、それを気に入らない女の子がたくさんいるって事でしょ」
「そう! 水無月さんの言う通りなんだよ。
だから、二楷堂ももっと他の女子に目を向けるべきだって。
おまえみたいにカッコいいヤツは、遊んだって許されるんだから」
「たまにはそれもいいんじゃない?」と溝口くんの言う事に加勢した私を、二楷堂が顔半分だけ振り返るから、すぐに目を逸らした。
他の女の子と過ごせばいい。
言った言葉は嘘じゃないし、強がって言ったわけでもない。
だって、一緒にいればいるほど、私はきっと二楷堂に惹かれ続けてしまうのが分かるから。
そしていつか、膨れ上がる恋愛感情と比例するように昂ぶった吸血衝動に駆られて、二楷堂の首に牙を立てる時がくるかもしれない。
だったら距離を空けるほかない。
好きだから一緒に居たい。
そう思わないわけではないけれど、二楷堂を自分の手で傷つける事に比べたら、そんな気持ちを抑え込むのはなんでもない。
ただ……二楷堂が悲しそうな色を瞳に浮かべたりするから、せっかくの決心が揺るがされる。