...Melting Love...―愛檻―
◇本能とキス
「ところで、亜姫に“お姫様疑惑”があるのを知ってた?」
「お姫様?」
電車の中で二楷堂が言ってきたのは、現代ではあまり聞かない言葉だった。
17時台の電車内は、学生で込み合ってる。
この時間の電車で座れた事は、ほとんどない。
「そ。お姫様。
まぁ、亜姫の外見じゃ、そう噂されても無理ないけど」
「どうせ、二楷堂がしつこく送り迎えしてるからでしょ」
「亜姫の雰囲気のせいもあると思うけどね。
高貴っていうか、やっぱり普通の子とは違うから」
「やっぱりって?」
まるで私の正体を知ってるみたいな言い方が引っかかって聞く。
二楷堂はたまにこういう発言をするから、その度に質問してるけど……。
「俺の欲目かな。
亜姫は俺にとって特別な子だからそう見えるだけかも」
こんな風にはぐらかされるのがオチだ。