...Melting Love...―愛檻―


このまま駅に行ったら、電車もいつもとは変えよう。
面倒だけど、違う路線を使って一度乗り換えればいつもとは違う電車で帰る事ができるハズだ。

そんな風に思いながら歩いていた時、ヴァンパイアの気配に気づいた。
ものすごいスピードで近づいてくるそれの気配に、その方向を見た時には目の前に立たれていた。

見た事はない男だ。
身体は大きく、二楷堂の倍はあるんじゃないかってほどがっしりしていた。
身長は私よりも少し大きいくらいで……目の色が少し淀んでいる。

血が足りていないのかもしれない。

男は私を見てニヤァっと気味の悪い笑みを浮かべた。

「ずっと君の事見ていたのに、いつも男に邪魔されて近づけなかったんだ……。
僕の事、気付いてたかい?」
「……いえ。ずっとっていつから?」
「半年くらい前からかな。電車で見かけてすぐに惹かれてね。
それからずっと同じ電車を使って話しかける機会を伺っていたのに、あの男がベッタリしてたから。
今日はひとりなんだね……」
「私に何の用?」

息が荒い男は、私の質問になおも気持ち悪い笑顔と口調で答える。





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