...Melting Love...―愛檻―


ここから逃げ出す事はできるかもしれない。
体格差もあるしスピード勝負なら勝てる見込みもある。

香りがどうのって言っているけど、それも人ごみに紛れてしまえばかき分けられるほどの強さじゃないハズだ。

だけど私を見失った場合、この男はどうするだろう。

他のターゲットを探すにしても、血を渇望しすぎているし、理性を効かせてうまく探せるだろうか。

手当たり次第なんて事になってもしも事件を起こされたら、協会側が情報収集に乗り出す。
大学の近くのこの場所で情報を集められたら、二楷堂の事が何らかの形で協会側にバレたりしない……?

そんな事が脳裏によぎって逃げるのが遅れた。

男が掴みかかってこようとしてるのに気づいて咄嗟に避けたけれど、男の爪が頬をかすめる。
私の頬を見た男の目の色がまた一段階くすんだところを見ると、血でも流れたのかもしれない。




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