...Melting Love...―愛檻―
逃げるだけならすぐにできる。
でも、どうしてもその後の事が気になってしまってそれができなくて……。
だけど私にこの興奮状態にある男を倒すなんて無理だって事も分かってる。
体格差がありすぎるし、吸血衝動に駆られている時のヴァンパイアは普段よりも力が増す。
先週、美音相手で思い知ったから、今この男相手に互角に戦えるとは到底思えない。
血を大人しくあげようかという考えも一瞬よぎった。
だけど、他の男に血を吸われる事を二楷堂が嫌がる気がして……。
この期に及んで自分よりも二楷堂の事ばかりを考えてしまう自分に気づいて、バカバカしく思えてしまう。
こんなに好きになってたのかと自分でも呆れるほど強い想い。
でも、だからこそ。
ここで事件を起こすわけにはいかない。
そう覚悟して身体から力を抜いて逃げるのをやめた。