...Melting Love...―愛檻―


二楷堂を呼ぼうとしたけれど、声が出ない。
心臓や、頭、神経……身体のありとあらゆるものがピリピリとした鋭い痛みに襲われて苦しい。

思わず膝をついた私に気づいた二楷堂が私に視線を向けた後、数歩前に歩き、うずくまっていた男を蹴飛ばした。

直後、少し痛みが軽くなって、それが二楷堂の威圧のせいだと気づく。

二楷堂の傍にいたからあんなにも苦しかったんだ……。
その証拠に、うずくまったままの男は二楷堂が近づくにつれてうめき声が苦しそうに掠れていく。

さっき私は近くにいたから苦しかったけれど、あの男の受けるそれはけた違いのハズだ。
二楷堂は男に向けて威圧しているのだから。

王家の力をまざまざと見せつけられて言葉も出なくなる。
異様な緊張感の中、二楷堂が男を見ながら言う。

「今ここで始末されるか、数分後に到着するハンターに身柄を拘束されるかどちらか選ばせてやる。
五秒やる。その間に決めろ」



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