...Melting Love...―愛檻―
いつもよりも低い声に怒りの感情が見えるようだった。
背中から感じとれるだけでも、恐ろしいほど怒っているのが分かる。
男は喉の辺りを両手で押さえながら、助けてくれ……と掠れた声で懇願する。
男の声を聞いた二楷堂は、ポケットから細いロープを取り出しそれで男の両足を手際よく拘束する。
そして、逃げたら今度は殺すと言ってから立ち上がり私に視線を移した。
いつもとは違う二楷堂の瞳の強さにどうすればいいのか分からなくなって息苦しさを覚えていると、そんな私に気づいてか、二楷堂は張りめぐらされた気の網を解くように優しく微笑んだ。
「行こう。時期ハンターがくる」
肩を抱く二楷堂に歩かされるままその場を離れる。
その力の強さに戸惑いながら歩く私の後ろの方からは、まだ男のうめき声が聞こえていた。
近くに美音の気配を感じたけれど……。
今の二楷堂に意見する事はできなくて、そのまま気づかない振りをするしかなかった。