...Melting Love...―愛檻―
◇冷静な殺意



久しぶりの協会は昔と何も変わっていなくて、それが逆に怖かった。
ここだけは時間が止まっている。

10年以上前からずっと。

高い塀や建物の壁には蔦類の植物が覆うようにしげっているのに、黒い鉄の門だけは不自然にむき出しの状態だった。

重たい門もずっと前から変わらないのに、錆びても壊れてもいない。
なのに開けるとギィ……と地響きみたいな音を立てて、私たちが侵入しようとしているのを誰かに教えているようだった。

本当に気味が悪い。
ヴァンパイアの私が思うのだから余程だ。

天気は悪くないのに、この建物の上だけは空までくすんで見えた。

美音がドアをノックすると、すぐに鍵の開く音が響いた。
そして静かにドアが開けられる。

分厚いドアが人ひとり入れるくらい開くと、中から見覚えのある顔が覗いた。
昔、お母さんの事を悪く言った人だ。


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