...Melting Love...―愛檻―
もっとも、協会の中に悪い印象を持たない人はいないけれど。
散々嫌味ばかり言われてきたから。
案内人の初老の男性は美音と私を確認すると、中に入るように告げた。
入ってすぐ広がるのはキレイな赤い絨毯が引かれているホールだ。
人間が侵入してきた時のカモフラージュのためか、絵画や置物が多数飾ってある。
ここも昔のままだ。
そして案内されたのは、ホールを抜けて突き当りにある部屋で……協会の会長がいる部屋だった。
三回のノックの後、鍵が開いて案内人がドアを開ける。
目の間には、ホールとは違って赤黒い絨毯が広がる。
そして、長い机が置いてある部屋の一番奥に、詰襟の礼服を身に着けた会長の姿があった。
10年以上前に会ったきりだけど、今でもよく覚えてる。
『おまえの血は危険だ。
人間に害を与え、最悪のケース、殺害する事もありえる。
極力、人間には近づかないようにしろ。
友人関係や恋人関係を築くなんて、もっての外だ』
何度もそう言われた事……目の前で何十回とお母さんを侮辱された事。
忘れたことなんて一度もない。