...Melting Love...―愛檻―
会長の言葉は私に有無を言わさないものだった。
会長の指示ひとつで罪のないヴァンパイアを処刑していいハズがない。
そんなの恐怖政治もいいところだ。
だけど、今のヴァンパイア界には正義なんてないし、実権は協会が握っているって話も聞いたばかりだ。
協会の中の誰かが異を唱えたところで、権力を持っているのは会長で……それが事実な以上、誰も逆らえない。
会長がどこまで本気かは分からないけれど、会長の残酷さは私がよく分かっている。
子どもだった私をまるでゴミでも見るような目で薄笑いながら嫌味を言い続けられる人だ。
自分の保身のために罪のないヴァンパイアに何かをしたところで、きっと何も思わない。
悔しさのあまりぎゅっと歯を食いしばる。
身体が震えるほどの怒りを感じたのなんて、初めてだった。
力をこめて手を握りしめていたせいで、手のひらに爪が食い込み血が流れている事に匂いで気づいた。