...Melting Love...―愛檻―
「俺としてはあの場で始末してもよかったけど、殺したってなるとハンター側を不利にして協会に付け入られる可能性が出てくるしね。
気持ちを抑えるのが大変だった」
殺すだとか始末だとか、穏やかな顔でする話じゃないけれど、二楷堂の表情はずっと微笑みを浮かべたままでそれがなんだか怖かった。
この人、ハンターって立場がなかったら本当にあの場であの男を殺してたんじゃないかって不安になる。
「さて、会長。ここでうかがいたい事があるんですが」
二楷堂の話に、終始うつむきっぱなしだった会長が顔を上げる。
その表情には、私に書類にサインをするように迫っていた時の憎たらしさの微塵も感じなかった。
疲れ切っているような、燃え尽きたような、そんな顔つきだ。
心なしか身体も一回り小さくなったように見えた。
「なんでしょうか……聖様」
「行方不明になってから今年で15年目ですが、まだ時効ではない。
という事は、俺は今も王家の第一継承者でいいんですよね?」
「……もちろんです」
「では、これからのヴァンパイア界の事はすべてにおいて俺に一任してもらえますね?」
静かに頷いて、もちろんですと言った会長に追い打ちをかけるように二楷堂が言う。