...Melting Love...―愛檻―
「そんな顔しなくても、そうされないように亜姫が俺だけを見ていればいい話だよ」
だったら別に難しい話じゃない。
そう思った直後に二楷堂が嬉しそうに笑うから、気持ちを読まれた事に気づいて、青くなっていた顔が一気に赤く染まる。
だからそれを誤魔化すように、ずっと気になっていた話題を持ち出す事にした。
「今日、正志さんが言ってた事、そろそろ答えて欲しいんだけど。
小さい頃一目惚れしたとか言ってた話」
後で教えるって言ったでしょ、と付け足すと、二楷堂は私の髪を撫でながら仕方なさそうに話し出す。
「ハンターに拾われて五年くらいが経った時、ある女の子に会ったんだ。
その子はお母さんが火事でなくなった建物の前で、一本の花を持ってしゃがみこんで泣いてた。
気付いたら無意識にその子に近づいていて……俺を見上げたその子と目が合った瞬間、恋に堕ちた」
「……それ、私?」
半信半疑で聞いたけれど、私にも思い当るものがあった。
確かに、お母さんが亡くなった建物の前で綺麗な顔をした男の子に会った覚えがある。
悲しみを続かせないって、強い決意をにじませた瞳は今でも覚えてる。