...Melting Love...―愛檻―


美音と、っていうより、美音の一族と暮らしていたのは、高校まで。
卒業と一緒にここで一人暮らしを始めたから。

一緒に暮らしていた時は、確かに吸血衝動は安定してた。

月に何度も夜な夜な家を抜け出す美音。
止めても無駄な事は分かってたから、美音が変な行動をしないように仕方なく一緒に抜け出して……美音が吸った男の記憶操作をした。

だけど。

血を吸うたびに、違う人格に変わっていく気がして怖かった。
色んな人間の血を吸っていくうちに、自分が自分でなくなっていって。

そしてやがて、血だけを求める怪物に成り果てる気がして……。
自分で自分を止められなくなるんじゃないかって、いつもそれが怖かった。

それが、美音から離れた理由。
そんな不安は何も解消されていないのにまた同じ生活に戻っても、同じ事を繰り返すだけだ。

「悪いけど、無理」

断わると、美音はふぅってため息をついてから呆れたみたいに笑った。



< 31 / 229 >

この作品をシェア

pagetop