...Melting Love...―愛檻―
「それが、二楷堂……」
昼間は頭もボーっとしていたし、なんとなく納得しちゃったけど。
よくよく考えてみると、そんなわけないって気持ちも出てくる。
だって、一部の噂では殺されたとかそんな話まであったのに、それがなんで普通に大学に通ってるの?
しかも、誘拐だとかいってたわりには、なんの不自由もなく生活してるみたいだし。
今の二楷堂を見る限りは、誘拐よりは家出って言葉の方が合ってる気がした。
「二楷堂が王子だっていう証拠は?」
少し離れた場所に立って聞くと、二楷堂は「んー」と小さく唸った後答える。
「亜姫が納得してくれそうなモノはないかな。
香だとか精気だとかは物証にはならないし」
そんな事はないと思う。
二楷堂から放たれてる、とてつもなく魅惑的な雰囲気。
それだけで、私は無意識のうちに逆らえないでいたんだから。
だけど、確かにそれだけじゃ完全に信用できない。