形見
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かくっ、と頭が下に引っ張られて、要は慌て瞬きした。
少しうつらうつらしたのだろうか。
障子をぴったり閉じた部屋の中は、先ほどまでの茜色を越えて、紫がかった光に沈んでいる。
手を置いていた銀白色の髪を、要は軽く叩いた。
「ん……要?」
「おはよ十希。よく寝てたね」
んー……と背筋を伸ばすものの、十希は要の膝に頭を乗せたままだ。
彼はよく眠る。
寝つきも良いし、すぅすぅと息をたてる寝顔は子供のように穏やかだ。
「早く起きて十希。俺食事時間なくなっちゃう」
そう言うと、やっと十希が少しはっきり起きた顔になった。