形見




下の山道から、声のような音がした。



「……?」






「十希(とき)様――!どちらにおいでですか――!」




体が強張った。



聞き慣れた屋敷の人間のものだった。







ここを去らなければ。



この場所をあいつらに知られるのは嫌だ。













でも、彼はまだ来ていない――。






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