マーブル色の太陽
「え~っと……さっきの乳酸なんとかって何ですか?」
「え?」
「いえ、ナースコールで……」
「ああ、あれね。あれはね隠語」
「隠語?」
「そう、隠語。関係者だけにわかる暗号みたいなものかな?」
「はあ……」
要領を得ない僕に、矢沢さんは窓のほうを向きながら、少し考えた後、こう言った。
「え~っと……相田君……ね。さっき相田君のように容態が急変した時とか、暴れ始めた時に一人じゃ手に負えないでしょ? だから、他のスタッフを呼ぶの。その時の暗号なの」
「なるほど……」
「他の患者さんがいる前で『急変です!』なんて言っちゃったら、動揺する人もいるでしょう? だから、ああやって隠して伝えるのね」
「矢沢さん……」
「ん?」
「僕も患者なんですけど……」