マーブル色の太陽

みどりが最後に僕の部屋に来たのは、確か、夏休みだったと思う。

小学校最後の夏休み。

休みもあと一週間を切ったというのに、まったく手をつけてない宿題を抱えて現れたみどりを、宿題が終わっているという優越感からか、僕は激しく責めた。

最初は小さく舌を出しておどけていたが、いつしか大粒の涙を浮かべ、まずいと思った次の瞬間、大声を出して泣き出してしまった。

マンション内のガキ大将にいじわるされても、母親にいたずらが見つかり叱られても、涙は浮かべるものの、声を出して泣いているみどりを見たことなんか、一度もなかった。

あせった僕は、母親に見つかる前にと、みどりにアイスを持たせた。

ソーダ味で中に小さなラムネが入った僕のお気に入りのアイスを。

みどりはそれを一瞬、きょとんとした顔で見つめた後、にこにこと微笑んで泣き止み、アイスを嬉しそうに齧っていた。
< 201 / 672 >

この作品をシェア

pagetop