マーブル色の太陽

「いいんです! こっちこそ急に帰ってすみませんでした」


僕はわざと大きな声でそう言った。

そこには、もうこれ以上話し掛けて来ないでくれ、という思いを込めた。

悪いとは思ったが、江口さんの気の弱さも利用させて貰った。

これで、話は終わりになるだろう、江口さんは話しかけてこないだろう、と。


「でも……」

「いいんです! 忘れてください。僕も忘れます」

「えっと……説明……」


江口さんは意外に食い下がった。

なんだろう。

何があるんだろう。

そういう気持ちが過ぎる。

だけど、聞いたとしてもいいことが起きるとは思えない。

僕は江口さんを突き放す。
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