マーブル色の太陽

「あのね、矢沢さんは病院辞めたの」

「えっ! ど、どうしてですか!?」

「……新聞見てないの? そうよね、高校生だったらあんまり読まないかな? あのね……」


お喋り好きな看護師が次の言葉を発しようと、口を開いた時だった。


「向井さん! ナースコールお願いできる?」


娯楽室に年配の看護師が顔を出した。

ナースキャップには向井と呼ばれた看護師のものより、一本多く、線が引かれている。

たぶん、この病棟の看護師長なんだろう。


「はい、はい、わかりました」


向井さんは話が途中だったことにそれほど後悔は見せず、さっさと娯楽室を出て行った。

僕も看護師長に一礼して娯楽室を出ようした、その時だった。
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