マーブル色の太陽
立ち上がり、スカートについた砂を払ってやろうとして躊躇するフリをする。
その代わりにハンカチを差し出す。
こういう小さな優しさ、さっき背中に回した腕のような瞬間的な愛撫。
そういうものが、江口さんを蝕んでいく。
きっと『声』が電話で言ったことも大したことではないのだろう。
江口さんの美しさをただ褒めるだけではなく、本人が納得する形で教える。
この部分は誰それに似ている、この部分はこうしたほうがいいであるとか、その程度だろう。
江口さんに足りなかったのは、本人も言っていたように、自信だ。
自分が持っている美に対する認識の浅さと、それに対する自信。
遅かれ早かれ、花開くものだったのだろう。
ただ、僕がそのきっかけを与えただけにすぎない。