マーブル色の太陽

歩きながら、江口さんは平静さを取り戻しつつある。

幸いにも、他の生徒とは遭遇することなく教室へ着くことが出来た。

もし、見つかった場合、その事に対する防御線も張らなければならない。

出来れば最小の労力で、全てを終わらせたい。


「ご、ごめんなさい……」


嗚咽も収まり、少し落ち着いてきた江口さんがそう言った。

江口さんの席。

机の上には、僕が買って来たジュースが乗っている。


「うん、僕の方こそごめんね」

「ううん。私……また……変なことしちゃって……」


江口さんは、「また変なこと」と言った。

さっき、激しく泣いたことを指すのだろうか。

確かにそのことも指すのだろう。

だが「また」とは何なのか。


「髪の毛も……びっくりしたでしょ?」


髪の毛?

やはり、あの髪の毛は江口さんのものなのか。

でも、そうだとして、髪の毛を切ったのは僕のはずだ。

髪の色を変えたことか?

いや、そんなことではないはずだ。


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