マーブル色の太陽
「いえ、先生方にいて貰った方が心強いです。突然、警察の方と話せと言われましても……」
「そうだね。いきなりの事で驚いたでしょう。ゆっくりでいいんですよ」
大久保は教頭に勧められた椅子に座りながら、僕の顔を見てゆっくりとそう言った。
もうひとりの若い刑事、高祖は、椅子を断り、立った姿勢で手帳を開いている。
大久保は机の上に組んだ、自分の手の皺を伸ばすように揉みながら、話し始める。
「昨日ね、私らの仲間が、ちょっとした事故にあってね。どういうわけか、君の名前を告げて去った人間がいるんです」
僕は馬場先生の方を見る。
その顔は黒い霧に覆われてはいるが、とても教え子をなんとか救おうとする顔ではなく、どちらかといえば、僕を追及する側の人間の様な印象を受けた。
その証拠に、高い位置で組んだ腕は僕を拒絶し、上に向けた顎は僕を見下しているように思えた。