マーブル色の太陽


「でも、どうしたのかな?」

「何か……棒のようなものを……バットかもしれない……振りかざして……」

「それで逃げた、と」

「はい……。だから、格好はわかりません……すみません」

「いや、いいんだよ。こちらの言い方も悪かったね。こちらこそ、すみません」


大久保はそう言いながら頭を下げた後、こう聞いてきた。


「何か見なかったかい?」

「何か……と言いますと?」

「誰かが殴り合っているところ、とか」


大久保はここで核心を突いて来た。

甘い。

僕の表情に変化は表れていないはずだ。

僕が即答を避け、思い返すフリをしてゆっくり「いいえ」と答えた、その時だった。
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