マーブル色の太陽


「うん? ああ、サトちゃんが、お山のてっぺんで、おなかちゅいたようって泣いてるだろうから、おっぱい飲ませてあげてねって」

「おっ! ……」

「えへへへ」


僕は照れた顔を見られたくなくて、ビニール袋の中を覗き込む。

みどりは渡してくれと頼まれたと言っていたが、その弁当箱は見慣れないものだった。


「これ、誰が作ったの?」

「ありがたく食えよ! じゃあ……江口さんに悪いから……行くね」


みどりはそう言って、岩を降りていこうとする。

僕はそのみどりの背に向かって、こう言った。


「みどり……帰ったら……話がある」


みどりはこちらを振り向き、なぜか一瞬泣きそうな顔を見せると、こくんと頷き、岩を降りていった。



みどりを見送る。

そのタイミングを見計らったように、江口さんが岩の下に来る。

きっと見ていたんだろう。
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