マーブル色の太陽


「はい……」


僕はとりあえず電話に出る。

スピーカーのハウリングに近い音が、僕の耳元で爆ぜる。


「もしもし? もしもし!」


何度も問い掛ける。

相手も話しているようなのだが、話すたびに音声は途切れ、誰から掛かってきたのかも、何を話そうとしているのかも、一向にわからなかった。

ただ、声の大きさと話す速さに比例して大きくなるスピーカーの雑音は、緊急を要しているように感じた。



再びディスプレイを見る。

表示された受信状態を示すアイコンは、アンテナが1本と圏外の表示を繰り返している。

ここでは、通話することは不可能なのかもしれない。

僕はダメで元々と言う気持ちで、携帯電話を再び耳につけた。
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