マーブル色の太陽


「ブ、ブレーキの……こ、故障のよ、ようです……ひ、低くい、姿勢で、な、何かに、しがみついて、ください」


運転手がマイクでそう言った。

一瞬の静寂の後、車内はさっき以上の、悲鳴と怒号に包まれる。

僕は江口さんを座席の足元に体を丸くさせて押し込み、その上から覆いかぶさった。


「クソッ! だから俺は路線に行きたかったのに……観光なんかに行かされるから、こんな目に遭うんだ……ヤバイ! ヤバイ……怖い……」


運転手はマイクを切り忘れていた。

さっきの冷静な放送とは違う声色に僕は愕然となる。



再び、先程聞いた、悲鳴のような鉄の音が響く。

あれはたぶん、ガードレールにバスの車体を擦り付けて、どうにか減速しようとした音だったのだろう。

音と共に擦りつけた際の振動も、床に伏せている僕らには伝わる。

僕は、その振動以上に体を震わせている江口さんを、ぎゅっと抱きしめた。
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