俺様ヤンキーに初恋を捧ぐ
「高校卒業式の日、杏を迎えに行ったんだ」

・・・え?

驚き顔で龍を見つめる。

龍は、少し笑って、でもすぐにその笑顔も消えていた。


「雷に色々言われて、色々考えた。でも、オレは藤堂の性を

捨てるわけにはいかない。子供はオレだけだから」

「・・・」


「だから、本気で一人前の大人になろうって決めた。

一人前の大人になって、杏を迎えに行こうって・・・」


…龍、そんな事思ってくれてたんだ。

私はもう、私の事なんて、何とも思わなくなったんだと思ってた。


「杏が苦しんでる事にも気づかず…やっと迎えに行ったら、

杏は高校を辞めてた…雷が、杏の耳の事教えてくれて、聾学校に行った事も

教えてくれた。…杏を守ってやりたくて、オレが出来ること全部したくて、

家にも行った…そしたら、お父さんに会ったよ」


…お父さんからは、何も聞かされなかった。なんで?


「杏の為に、もう会わないでくれって・・・

杏には静かで穏やかな生活を送ってもらいたいって・・・

杏の耳の事を気にして…確かにそうだよな。その事で、杏を・・・

一杯苦しめたのは、俺自身なんだから」


その言葉に私は首を振って否定した。

だって、苦しめたのは、龍じゃないもの・・・

龍は精一杯、私を守って、愛してくれた・・・
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