俺様ヤンキーに初恋を捧ぐ
「龍くん」

突然の声に、龍は私を掴んだまま、振り返った。

「…杏の」


龍の後ろには、お父さんが立っていた。

明らかに怒った顔のお父さん。

私は急いで、龍の前に立ちはだかった。

龍が怒られたらいやだから。


…すると、お父さんは力なく笑った。

「・・・大丈夫だ、龍くんを殴ったりなんかしないから。

でも、事情は聞きたい・・・何で今、ここに龍くんがいるのか」


お父さんの言葉に、龍は頷いた。

そして、私たちは一旦部屋の中に入っていった。


説明を受けたお父さんは、黙ったまま、

私と龍を見つめていた。

…やはり、お父さんは、反対なのかな。


「…龍くん」

「・・・はい」


私は、震える手で、龍の手を掴んだ。

龍は優しく、私の手を握りしめた。


・・・大丈夫。そう言ってるかのように。
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