俺様ヤンキーに初恋を捧ぐ
「…それから、左耳も、」


「・・・」


「もう、ほとんど聞こえない」


「なんでもっと・・・

早くお父さんに言ってくれなかったんだ?

…杏はなんで、何でも一人で抱え込むんだ?

私は杏の父親だぞ?もっと頼って、甘えていいんだよ?

そんなに無理して笑顔なんて作らなくていいんだ。

苦しいなら、泣いていいんだよ?」


「…お父さん」

優しい口調で言われ、

笑顔の仮面が剥がれていく・・・

苦しいよ・・・悲しいよ・・・

本当は笑ってなんかいられない。

自分の耳から、音が奪われる・・・

こんなに大好きなお父さんの声も・・・

大好きな音楽も・・・

街に流れる自然な音も…すべてが聞こえなくなる。


泣き崩れた私を、

大きな腕で、お父さんは包み込むように抱きしめた。

「・・・何で、何も聞こえなくなるの?

何でこんな変な病気になっちゃったの?」


泣きながら、今まで悩んでいたことがすべて、

口から出ていた。

お父さんは黙ったまま、頷き、私の背中を

優しく撫でていてくれた。
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