俺様ヤンキーに初恋を捧ぐ
私の肩を抱き、お父さんは病院の中へと入っていく。

名前が呼ばれるまで、待合室で、テレビを見ながら、

ぼんやりとしていると、ニュースが流れていた。


『藤堂財閥会長藤堂氏が緊急入院』


藤堂財閥は日本でも5本の指に入る程の大きな財閥。

その会長が倒れたとのことで、大々的に取り上げられていた。


「…お父さん、どうかしたの?」

「…杏」


「・・・ん?」

「龍くんの用事ってなんだ?」

「家に帰らないといけない用事だって」


「・・・そうか」


お父さんは、まだ何か言いたげにしていたが、

それ以上は、何も言わなかった。



「杏ちゃん、中へどうぞ」

仲良しの看護師さんに名前を呼ばれ診察室へ。




『…会長の代理として、社長が会長に就任。

その社長の長男、藤堂 龍氏が、社長代理に就任いたしました』


アナウンサーの声は、

ほとんど聞こえなくなった私の耳には

届くことはなかった・・・
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