俺様ヤンキーに初恋を捧ぐ
【杏side】

診察が終わり、外に出た。

私の表情も、お父さんの表情も、とても暗かった。

…そりゃあそうだよね。

聞こえなくなった左耳の事は諦めても、

まだかろうじて聞こえてる右耳には、まだどこか期待してた。

…でも、先生の言葉は無情にもその期待を裏切るものだった。


「…杏ちゃん、お父さん、とても言いにくいのですが、

今の発作の回数を考えますと、遅くとも今年中には、

右耳も、完全に聴力を失うと思います」


「・・・そんな」


「今後、普通の高校に通う事は、

何かと不便になってくると思います。

杏ちゃんは、人の唇で何を言ってるのかわかっている。

日常会話は問題なくても、授業は別問題です。

英語を始め、特別授業なんかは専門用語が並ぶ。

理解するのは困難になるでしょう…ですから、

聾学校に通う事をお勧めします…杏ちゃんの為にも、

2人でよく話し合ってください」


「・・・わかりました」


・・・言葉ではそう言った。

でも心の中は、全然わかってない。

分かりたくなんかない。

聾学校なんて所には、通いたくない。
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