悪の皇女





兵士の横を素通りしたイザベラ皇女は宮殿の武器庫にやってきた。そこには国王軍の“計画”とする大量の武器が眠る。所謂同盟国同士の文書に綴られた条約を違反するもの。そして国家そのものを揺るがす核まで。



「ふふふ。王子様、ねぇ。なんて欲深く哀れな“皇女様”なのかしら。」



まるで他人事。


イザベラ皇女の終始笑いを零す。



「―――お戯れを、イザベラ皇女。」

「あら。」



そこにやってきたのは国王軍中将・ローガン。腰に諸刃の剣を差す中将は、頬に残る切り古傷が特徴。その聞き慣れた、低い声で誰だか分かったイザベラ皇女は笑みを絶やさぬまま振り返る。
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