悪の皇女
「自ら恨み役を買うとは、皮肉な方だ。全てを知ったあと、違う意味でキャロライン皇女様は立ち直れなくなるやもしれませんぞ?」
「ふん。愛とやらを信じるまでだ。ダニエル殿とキャロラインの愛が勝るか、絶望の淵へ沈むか。わたくしは見届ける事が出来ぬゆえ、お前にキャロラインを託する。」
その言葉を聞いたローガンはフッと鼻であしらい、
思いの丈を口にする。
たった一言。だがその一言に重みがあった。ずっと言いたくても言えず内に秘めていた思い。一国の姫君と中将の関係ゆえに抑えていた、張り裂けそうな愛おしさ。
「愛しています。」
しかしとうにローガンの気持ちに気付いていたイザベラ皇女。こちらも長年連れ添った軍人に特別な情をいつしか抱いていた。