悪の皇女
「後は任せる。」
「御意。」
システィーンのドレスを摘まみ上品且つ優雅に背を向ける。足蹴にしていたものを一見して大広間から立ち去る皇女様。
彼女が居なくなった事にしめたとでも思ったか兵士が逃亡を図る。しかし中将がそれを許す訳もなく鋭い目を向ける。
「取り押さえろ。」
バッと一人の兵士を取り囲むのは同じ王国兵士。暴れる兵士を抑えながら彼等はふと思う。
皇女様がこの兵士を捕らえるのはただの私情とばかり思っていた。しかし沸き上がるのは些細な疑問。
――――コイツ、どこの者だ?
部隊すら分からない見知らぬ兵士。兵士は隣に居る者に目配せするがそれを知る者は居なかった。