ある人々の恋愛

水溜りの太陽

　ぐるるる。腹から不機嫌な音が鳴ると、岩の上で気持ちよくうたた寝をしていた蛙がびっくりした様子で池にポチャリと落ちていった。
池にいた亀は何事かという顔で私の顔を見上げ、鳩は餌をくれるものだと勘違いしバサバサと羽音を立てて集まってくる。
　公園のアナログ式時計は、昼１２時を過ぎ１時を示そうとしていた。ため息をついて、再度携帯を取り出し、電話をかけた。だがすぐに留守番サービスに切り替わってしまう。そんな行為を何度繰り返したことだろう。
昼の公園には、暇そうなおじさん、子連れの母親、近くの会社のサラリーマンしかいない。小さな橋のたもとで立ち待っていると、木のギシギシした音がする。ギシギシミシミシ。壊れそうで、まだ壊れていない一歩手前のギリギリ。縁ギリギリまで水を入れたコップのような、あとほんの一滴の雫が落ちれば水が全て溢れてしまう危険さを孕んだ状態。
　いつかこうなることは分かっていた。彼が私を選んでくれた日から、初めて彼と寝た日から、彼が他の女性と抱き合いキスしていた日から。
　昨夜、彼から送られてきたメールを思い出す。私はちょうどその時、コンビニに行って朝食のパンを買おうとしていた。メロンパンとハムロールパンが私の定番メニューで、無意識の内に手を伸ばしていた。ズボンの後ろポケットにしまっていた携帯が切なそうに震えた。
　『話がしたい。明日いつもの公園で１２時に会おう。』たった２～３行の文章で簡潔に書かれてあった。そういえば彼とメールするのも何日ぶりだろう。最後に会ったのが１ヶ月前で、その後しばらくはメールだった。何日か前からはメールも来なくなった。