ある人々の恋愛
 あれは、私の高校卒業した日であった。私は彼に卒業証書を見せ、いつものように卒業式の話し、同級生の話をしようとした。
いつも嬉しそうに頷く彼が、その日は調子が悪かったのか、むっつりと黙ったまま、目を合わせてくれなかった。
「体調が悪いのね。すぐ帰るね」私は笑顔で帰り支度を始めた。彼はため息をつくように、「何でいつも笑顔なんだ。気持ち悪い」とぼっそと呟いた。
喧嘩することはあるけれど、その日はなんだか険悪な雰囲気がただよっていた。私は何か彼に悪いことをしてしまったのだろうかと、急に不安になった。彼と私の間に冷たい空気がただよった。
「何か私、悪いことしたかな。嫌なことがあればきちんと言ってくれれば改善するよ」
 「俺にもう構うなよ!!」冷たい沈黙が切れて、彼の声が病室に響いた。私の心が締めつけられた。彼の言葉が理解できなかった。いつも話す彼の言葉が。
 一筋の涙が頬を伝って、床に落ちた。空は晴天で、気持ち言い天気なのに、私と彼のいる病室は、浮かない曇り空だ。
彼は私の涙を見て、一瞬動揺した。すぐに背を向けて、布団を被ってしまった。
大好きな彼と距離が開くのを感じた。
「おまえなんか、大嫌いだ。もう二度と俺の前に現れるな」
私は、足早に病室を出て行った。道行く人が私の顔を見て、気まずそうに顔を背けた。
 いや、いや、いや。会えないなんて嫌だよ。
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