真夏の残骸
あの夏がじりじりとわたしを焦がす。
やめて、もう、やめて。
蝉の声がじわじわとわたしを蝕む。
だめだよ、だめだよ。
「それじゃあちか、またねー」
麻実の声が遠い。
適当に返事をして手早く電話を切った。
心臓が異様なまでに速い。
きゅうっと胸が苦しくなってそっと服の上から撫でた。
どうしよう、どうしよう。
「………きりの、くん…」
あの夏に置き去りにしたはずの感情が、鮮明に色づき始めていた。