真夏の残骸

ゴーン、ゴーン、ゴーン。


きりのくん。
きりのくん。
きりのくん。


……会いたいよ。


心の中に転がってきた言葉は、紛れもなくわたしの本音だった。

会いたい。

過去のことを蒸し返したいわけでも、あのキスの意味を問い質したいわけでもない。

ただ、ただ。

きりのくんは今、幸せかな。

それを知って安心したいだけ。

忘れないでと懇願していた君が、笑顔でいるか、気になるだけ。

その幸せや笑顔に、わたしが何一つ関与していなくても。

…だからお願い、一目だけでも。
< 32 / 75 >

この作品をシェア

pagetop