真夏の残骸
「かくれんぼするぞー!!おれがおに!おれにかったらっ!からおけおごりだあー!!!100かぞえるからなー!!」
嘘か本当かも解らないことを叫びながら田中くんは大きな木に近寄り数を数え始めた。
奢り、と聞いたら盛り上がりにさらに火が付く。
覚束無い足取りのひとも全く酔っていないひとも、散り散りに隠れ場所を探しに走り出した。
反射的に、わたしも走っていた。
アルコールで温まった身体がさらに熱くなる。
夏の夜は息苦しく、酸素さえ取り込むのがつらい。
「28ー29ー」
あんなに酔っていたくせに数はしっかり数えている田中くんの声が遠く聞こえる。
大学生にもなってかくれんぼなんて。
お酒の力がなければ絶対にしないだろうな。