真夏の残骸
…でも、でも、でも。
なぜか急に目元が熱くなって、鼻の奥がつんとした。
ばかみたいだ。
今でも蝉の音を聞くと思い出す。
「45ー46ー」
いつか大人になれば忘れられると思っていた。
あんな過ちみたいな、事故みたいな、おかしな口づけ。
所詮は小学生のままごとみたいな、恋愛の真似事。
だけど……大学生になっても覚えていたよ。
毎年夏になる度に思い出して、蝉の声が、煩くて。
心臓をぎりぎりと締め付けるこの感情は嘘じゃない。
幻想でもない。