真夏の残骸

「71ー72ー」


蚊に刺されるかもしれないなんて考える暇はなかった。

林の中を、枯れ枝を踏みつけながら進んでいく。

昔と何一つ変わっていないように、そこに、大木は佇んでいた。

やはりこの木だけが一際大きくて。

…何かに突き動かされるように、足が地面を蹴った。

この木の根元で、わたしは、きりのくんと―――




「………………なん、で、」

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