真夏の残骸
やんわりと拘束を解いて振り向くと、目を少し赤くしたきりのくんがいた。
ばつが悪そうに視線をふいっと逸らしたけど、今度は赤くなった耳が黒髪から覗いた。
…ずるいよ、かわいい。
きゅんと鳴った心臓が恨めしい。
昔のわたしの恋心は満たされたけど、まだ、足りない。
ねえねえ、きりのくん。
「……10年も待たせるなんて、ひどいよ」
「ちかが俺の事なんてもう忘れてたら…って思ったら怖かったんだ…。だけどやっぱり会いたくて…」
弱弱しい言葉が胸に突き刺さって、その痛みさえ愛おしい。
悲しそうに俯くきりのくんの頬をそっと両手で包んだ。
暑いね、……熱いよ。
咽喉の渇きが酷くて、今にも張り付いてしまいそうだった。