真夏の残骸
僅かな唾液を飲み下して、舌で唇を潤して。
きりのくんがなんとも言えない表情でわたしをじっと見つめている。
熱を帯びた視線を浴びながら、そっと耳に唇を寄せた。
「ずっとずっと、覚えてたよ」
言葉はもう要らなかった。
きりのくんの濡れた双眸がじわりと熱を孕む。
ちか、と掠れた声がわたしの名前を呼ぶ。
汗か涙か解らないものが頬を、首筋を、流れ落ちる。
きりのくん、と泣きそうな声で彼の名前を呼ぶ。
頭の後ろに彼の手が回って、優しく引き寄せられた。
あの日より、少し仕草が大人っぽくなっていて。
だけどどこかぎこちなくて。
それが全部、可愛くて。