真夏の残骸

わたしはおとなしく瞳を閉じた。

緊張しているのか睫毛が震える。

吐息が熱い。

くらくらと眩暈がしそうな熱量。

だけど、ずっと、それが欲しかった。

もう片方の手がわたしの頬にそうっと添えられた。

まるで、壊れ物に触れるみたいに、優しく。


「……ちか、大好きだよ」


わたしも、と声にならない言葉を唇越しに伝えた。

柔らかくて熱いそれは、脳みそをどろどろに溶かしてしまう。

食むような口づけはやがて激しく、深みに嵌まる。

舌で唇を抉じ開けられ弄ばれ始めたとき、アイスを食べていたきりのくんの舌を思い出した。

あの甘そうな舌が今、わたしの舌を味わっているなんて。

…やっぱりわたしは変態かもしれないね。
< 68 / 75 >

この作品をシェア

pagetop