真夏の残骸
恥ずかしさなんて感じる暇は無かった。
アルコールの匂いが鼻腔を満たして、くらくらする。
醒めたはずなのに、また酔ってしまいそうだった。
「きりの、くっ…」
「ちか…」
触れては離れて、離れては触れる。
まだ足りないと言わんばかりに舌を絡め合って、酸素まで奪い合うように。
名残惜しそうに何度も、何度も。
いつの間にかお互いを抱きしめながらわたしたちは唇を重ねた。
夏の暑さなんて気にならないくらい、その体温が心地良い。
舌を絡めるいやらしい音が耳にこびりつく。
不思議なくらい、お互いの息遣いと水音しか聞こえなかった。
誰の声も聞こえてこない。
夢の中にいるようで、だけどこの熱量は本物で。