真夏の残骸
どれだけそうしていたか解らないけど、携帯電話のバイブで現実に引き戻された。
胸元を這っていたきりのくんの手がぴたりと止まる。
きっと麻美からのメールだ、と直感的に思った。
とんとん、と身体を叩けばきりのくんは残念そうにわたしの舌を解放して、だけど腕はしっかりとわたしの身体を抱いていた。
拗ねた表情が子供のようで可愛くて思わず笑ってしまう。
「なんで笑うんだよ…」
「いや、キス魔なんだなーって」
顔を赤くして目を逸らすきりのくんの唇に、ちゅっと軽く口づけた。
お返しだよ、なんて笑えばさっきまであんなことをしていたくせに、きりのくんはこれ以上ないほど真っ赤になって俯いてしまった。
……なんでこのひと、こんなに可愛いんだろう。
やっぱり心臓がきゅんきゅん鳴って、幸せってこういうことなんだなーと呑気に思った。