真夏の残骸

どれだけそうしていたか解らないけど、携帯電話のバイブで現実に引き戻された。

胸元を這っていたきりのくんの手がぴたりと止まる。

きっと麻美からのメールだ、と直感的に思った。

とんとん、と身体を叩けばきりのくんは残念そうにわたしの舌を解放して、だけど腕はしっかりとわたしの身体を抱いていた。

拗ねた表情が子供のようで可愛くて思わず笑ってしまう。


「なんで笑うんだよ…」

「いや、キス魔なんだなーって」


顔を赤くして目を逸らすきりのくんの唇に、ちゅっと軽く口づけた。

お返しだよ、なんて笑えばさっきまであんなことをしていたくせに、きりのくんはこれ以上ないほど真っ赤になって俯いてしまった。

……なんでこのひと、こんなに可愛いんだろう。

やっぱり心臓がきゅんきゅん鳴って、幸せってこういうことなんだなーと呑気に思った。
< 70 / 75 >

この作品をシェア

pagetop