真夏の残骸

あと、錐乃くんのフルネームをやっと思い出した。

ずっと“きりのくん”は苗字だと思ってたけど…お互い名前で呼んでたんだなぁ…。

今さら過ぎるけど、その発見がなんだか嬉しかった。

本当に友達だったのかな、とか考えちゃってた自分がばかみたい。

ちょっと申し訳ない気持ちで隣を見上げると―――本物の錐乃くんがいる。

わたしの幻覚でもなんでもない、本当の、ニ十歳の錐乃くん。

当たり前のような、夢のようなこの光景に思わず頬が緩んだ。


「にやにやしちゃって、可愛い」


自分だってにやにやしてるくせに、と言葉を発する前に飲みこまれた。

それも舌のオプション付きで。


………やっぱり錐乃君、キス魔だ。

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