記憶
「ままのところ」
行こう、と美優が手を差し出す。
私はその手を握りしめ歩きだした。
病院はとても古かった。
今にも何かが出て来そうな雰囲気、
とても不気味で面白かった。
少し歩いていくと
お母さんの声が漏れている場所。
そこに映る影は
お母さんと元汰のものだった。
二人とも泣いていた。
右にいる美優も泣いていた。
この出来事は
あまり悲しくないことだったはず
--なのに皆泣いていて
少し、おかしい。
私は幼ながらにそう思った。